支部長挨拶
平成28年度採用の皆さん、臨床検査技師国家試験の合格並びに国立病院機構、ナショナルセンターへの就職おめでとうございます。新たな気持ちでこの日を迎えられ歩みだされたことに歓迎の意を表します。これからは学生気分を一新し、医療人として日々精進し、施設で必要とされる臨床検査技師になってください。
医療の一旦を担う臨床検査技師とは言え、患者様の命を預かる責任と使命感を認識し、そのために医療技術の習得と将来を読む目を身につけ、積極的な研修参加や学会参加、他部門との連携、社会人としての人格形成も必須となります。
本年は、診療報酬改定年にあたり、検査部門では検体検査部門を中心に減点が見られましたが、一方で細菌検査培養同定、遺伝子部門、静脈採取料(採血)では増点があり、検査科全体では収支差は殆どありませんでした。検査の自動化が進む中で、チーム医療に関わる検査・オーダーメイド医療・患者様とのかかわりのある検査には加点ないし検査点数の据え置きという措置がなされる傾向が見受けられ、より付加価値のあるデータの提供とその確かさが求められています。今後は、2025年問題(団塊の世代が後期高齢者となり、4人に一人が75歳以上となるので医療、介護、福祉サービスへの需要が高まり、社会保障のバランスがくずれること)により、検査においては在宅医療に向けた検査に視線が向けられ、新たな検査技師のフィールドが形成されることが示唆されています。政令では検体採取業務に対する受講が義務付けられ、検査説明する意図はこうした未来への先駆的な業務でもあります。機械に使われるのではなく機械を使いこなしてこそ技師としての力量が発揮されます。
今回の改正で検査業界にとって大きな目玉は国際標準検査加算の新設です。臨床検査室の品質と能力に関する国際規格で定められた要件を第三者機関のISO(国際標準化機構)やCAP(アメリカ臨床病理協会)によって精度保証を認定する仕組みについて診療報酬で評価されることになりました。
精度保証された検査結果とは、例えれば「この大根は美味しい」と漠然に伝えた場合を考えてみましょう。その大根はどの様なマニュアルを用いて栽培され、どういった成分が配合された肥料をどこから購入しどれだけの量と期間で与えたか、販売までの温度管理、流通経路はどうなのか、不味いという意見が聞かれたときにどの様に対応し原因を遡って調査し、改善・改良するか、その確認を誰が行い、誰が責任を持つか等々。これらを謳った上で販売されてはじめて消費者、料亭から認められ自信をもって大根を商品化し、信用されるのです。
いわば、ISO15189はデータという商品の安定を保証するツールとなっているのです。これを実施して得られる効果は患者様に還元されますが、今後開発されるであろう新薬、治療評価など、シビアなデータ評価が必要な場合において効力を持ちます。臨床検査技師が臨床へ提供するデータはこうした重みと責任が伴わないといけないのです。
登山においても誰もが知るように一気に駆け上る近道はなく、臨床検査の専門家に到達するには普段から自分自身を切磋琢磨し、自己啓発しながら継続しなければなりません。 経験上ですが、出来ないことを指導・説明を受けてできるようにする、一人で責任を持って出来るようになる、他に良い方法がないかリサーチする、施設でそれを試し取り入れてみる、指導者としてそれを後輩に伝える、学会や講演会でそうした経験とノウハウを広める、そうした分野を多数もつ、熟練度の物差しとなる資格を取得する。そこに人が集まり高尚な話し合いが持て、信頼が得られ、豊かな働き甲斐のある生活が生まれると思います。
皆さんの人生、先は長く、医療の進歩は目覚ましく臨床検査技師の役割は大きく変わることも考えられます。こうした流れにしっかり乗り、皆さん自信もゆっくりかつ確実に歩んでいって下さい。
6月には国立病院臨床検査技師協会東海北陸支部(国臨協東海北陸支部)の研修会が三重県で開催されます。新人の皆さんには是非とも参加いただきあらためて歓迎させていただきたいと思います。
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